デジタル化によるモノの非物質化と低コスト化
1-1. 物理メディアからデジタルメディアへ
CDやDVDといった物理メディアは、製造(プレス)、印刷、輸送、在庫管理など多くのコストがかかっていました。しかし、ストリーミングやダウンロード配信などのデジタルメディアが普及したことで、こうした物理的プロセスが不要となり、大幅なコスト削減が実現しています。
1-2. 所有からアクセスへ
「購入して所有する」時代から、「必要なときにアクセスする」時代へシフトしています。例として、音楽や動画はストリーミングサービスで聴いたり観たりするだけ、ソフトウェアもSaaS型で借りるだけ、という形が一般化してきています。その結果、一度にまとまった金額を支払う必要性が低下しており、物理的なモノに対する支出機会も減少しています。
「時間」という有限リソースの占有
2-1. 低コスト・高ボリュームのデジタルサービス
サブスクや広告視聴による無料サービスなどが増え、「ほぼお金をかけずに利用できる」あるいは「定額(低額)で大量のコンテンツを楽しめる」状況が生まれました。こうしたサービスは、人々の時間を大きく占有するようになっています。
2-2. 消費の動機と時間の関連
人が何かを購入したりサービスを利用したりするには、「そこに時間とお金を投下するだけの動機」が必要です。しかし、安価もしくは無料のサービスだけで十分に時間を使えて満足感を得られる場合、他の高額な消費に目を向ける動機が生まれにくくなります。結果として、リアルでお金をかける場面そのものが減り、使われる通貨の量が減ります。
アテンション(注意)経済との結びつき
3-1. 企業は「時間と注意」を奪い合う
現代のデジタルサービスは、利用者のアテンション(注意)と時間をできるだけ多く獲得することで広告収益やサブスクリプション収益を高める戦略を取っています。結果として、利用者側は「お金を払わなくても楽しめる場所」に膨大な時間を使うようになります。
3-2. 他の消費機会の損失
時間を大量に占有されるということは、その分だけ「他の消費活動を行う時間」や「興味を惹かれる機会」も奪われることを意味します。消費が起こるきっかけ自体が減るため、結果的に通貨が使われる量や場面が減り、通貨の必要性が下がっていくわけです。
「通貨の必要性低下」に至る要因
- モノの非物質化と低コスト化
- 音楽・映像・ソフトウェアなどがサブスク・デジタルで提供される
- 物理的なプロセスが消滅または簡素化し、大きな支払いが不要になる
- 所有からアクセスへの価値観の変化
- 物を「買って持つ」よりも、必要なときに利用できれば良いという考え方
- 結果として、従来型の「大きな買い物」が減少
- 時間を奪う低コスト・高ボリュームサービスの存在
- サブスクや無料ゲーム、SNSなどが人々の可処分時間を圧倒的に占有
- 他のサービスや商品の検討・購入の機会が減少
- アテンション経済による機会費用の増大
- デジタルサービスは広告や会員料などで収益を得るために利用者の時間を奪おうとする
- ユーザーは「無料もしくは定額」のサービスだけで十分楽しめるため、お金を支払う行為自体が後回しになりやすい
今後の展望とインパクト
さらなるデジタル化・サービス多様化
VR/AR技術などが進歩すると、より多くの体験やコンテンツがデジタル上で享受可能になり、いっそう低コストでの満足が得られる環境が整います。
リアル消費への回帰は限定的か
リアルの体験を求める動きは一定数存在するが、デジタルサービスの利便性や安価な価格設定は魅力的であり、今後もしばらくはデジタル優勢が続くと考えられます。
通貨や決済形態の変化
サブスクやシェアリングサービスの普及は、通貨を「一度に多額使う」形から「少額・定期利用」へと変化させます。結果として、「手元のお金があまり減らない」感覚が広がり、実質的に「大きなお金を準備する必要」が薄れていきます。
注意すべき「サブスク疲れ」や「デジタルコンテンツ過剰」
サブスクを多数利用してトータル出費が増えたり、コンテンツの量が膨大すぎて逆に消費をうまく楽しめない人も増えています。こうした面では、必ずしも通貨利用が減る一方ではない可能性もありますが、少なくとも“大きなモノ消費”が減る流れは続くと予想されます。
まとめ
「通貨の必要性低下」とは、デジタル化と低コスト化によって、かつて物理的なメディアやモノに支払っていた大きなコストが不要になり、さらに、時間という有限資源を占有するサービスが増え、人々がほかの消費に振り向けるきっかけや時間自体を奪っていることで、従来ほど大きな支出をしなくても十分に満足できる状況が生まれている、という現象を指します。
これは単に「お金が要らなくなった」という話ではありません。デジタルサービスの無料化・低額化やサブスク、シェアリング、広告モデルなどの多様な形態が普及し、お金を払う必要性や機会が変容してきているのです。特に、低コスト・高ボリュームなデジタルサービスに時間を集中させることで、“大きな買い物”や“リアルな場所での出費”の機会が減るという側面が、通貨の動きを抑制している大きな要因だと言えます。
今後もデジタル化と時間占有型サービスの拡大が進む限り、物理的なモノを購入して所有することの意味や、通貨を大量に使う場面は相対的に減少する可能性があります。その結果として、「通貨の必要性は確実に変化していく(あるいは低下していく)」と予想されます。
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